シードルは心臓の健康を促進する役割を果たせるのか?

シードルは心臓の健康を促進する役割を果たせるのか?

シードルに心臓の健康を支える力があるかどうか。この問いは、りんごを原料としたこの発酵飲料がもたらす成分や効果を知ることで見えてくる。

ポリフェノールと抗酸化作用

ナチュラルなシードルには、ポリフェノールという植物由来の成分が多く含まれている。これは抗酸化物質であり、体内の酸化ストレスや炎症と闘う働きを持つ。これらの炎症は動脈硬化や心疾患のリスクを高めるとされており、ポリフェノールの摂取が健康維持に寄与する可能性がある。

発酵を経ることで、これらの成分のバイオアベイラビリティ(吸収率)が高まるとされる。また、シードルに使用される特定のりんご品種は赤ワインに匹敵する量のフェノール化合物を含んでおり、これも注目されている点だ。

主なポリフェノールの利点:

  • 活性酸素の除去
  • 血管の柔軟性維持
  • 炎症の抑制
  • 血液循環の改善
  • LDLコレステロールの低下

アルコールの影響とその複雑性

シードルはアルコールを含む飲料であるため、心臓に対する影響もアルコール由来の要素が含まれる。一部の研究では、少量のアルコール摂取が冠動脈疾患のリスクを低下させるという結果が出ている。

ただし、この分野の研究には相反する結果が存在し、「中程度の飲酒が有益か」という点については意見が分かれている。最新の研究では、いかなる量でもアルコールは健康寿命を損ねる可能性があると警告する声もある。

アルコール摂取の注意点:

  • 飲酒量が増えると全死因死亡率のリスクが上昇
  • 女性は特に心疾患リスクが高まりやすい
  • 一般的なガイドラインでは、毎日の飲酒は勧められていない

栄養素としての価値

ナチュラルで無添加のシードルは、微量ではあるがカリウムやビタミンCなどの栄養素を含む。ただし、発酵過程でビタミンCの含有量は減少する。栄養補給を目的とするには他の食品が適している。

シードルの種類と混同されがちな製品

「アップルサイダー」と「ハードサイダー(シードル)」はしばしば混同されるが、前者はアルコールを含まない生絞りのりんごジュースである。後者はアルコール発酵を経た飲料であり、全く別物だ。

また、「アップルサイダービネガー(ACV)」には心臓に良い影響をもたらす研究も多いが、これも別の製品である。

砂糖の含有量に注意

市販されている多くのシードルには、味を整えるために砂糖が多く添加されていることがある。過剰な糖分摂取は心臓の健康に悪影響を及ぼす。自然発酵タイプや無糖シードルを選ぶことが推奨される。

選ぶべきシードルの特徴:

  • 原材料がシンプル(りんご、酵母、水)
  • 砂糖や人工甘味料が無添加
  • 製造過程が明確なもの(クラフト系など)
  • 濁りのある非加熱製法の製品(ポリフェノールが豊富)

飲むべきかどうかの判断基準

飲むかどうかを決める際は、ポリフェノールの恩恵とアルコールのリスクのバランスを考慮する必要がある。あくまでも楽しみとして、頻度と量をコントロールすることが前提だ。

こんな人には不向き:

  • アルコールに弱い体質の方
  • 心臓疾患の既往がある方
  • 妊娠中・授乳中の方
  • 薬を服用中でアルコールに禁忌がある方

シードルを取り入れる工夫:

  • 食事と一緒に少量を味わう
  • ノンアルコールシードルを選ぶ
  • 「週に1〜2回、グラス1杯以下」に留める
  • 飲まない日を設ける(休肝日)

アルコールなしでも健康を支える選択肢

シードルの風味やポリフェノールを取り入れたい場合は、ノンアルコールの自然発酵サイダーやりんごそのものを食べるのがよい選択肢だ。ビネガーとして摂取することも可能であり、食事に取り入れやすい。


シードルには心臓の健康に役立つ成分が含まれている可能性がある。ただし、アルコールの摂取には一貫してリスクが伴う。楽しむなら、ナチュラルで砂糖控えめな製品を選び、量を厳しく管理する必要がある。心臓を気にする人ほど、日々の食生活、運動、ストレス管理など全体的な生活習慣に目を向けるべきだ。シードルはその中で「楽しみのひとつ」として存在するくらいがちょうど良い。